会社選び
システム開発は内製と外注どっち?「1人雇う本当のコスト」で判断する
「システムは社内で作った(内製した)方が安いのでは?」——これは多くの経営者が抱く自然な発想ですが、実際には逆になることが多いです。この記事では、内製と外注を「エンジニアを1人雇う本当のコスト」と「損益分岐の目安」という具体的な数字で比較し、内製すべきか判断する5つの質問まで踏み込んで解説します。結論を先に言えば、**判断のカギは「これから、どれだけの量を、どれくらいの頻度で作り続けるか」**の一点に尽きます。
「内製=安い」は誤解。エンジニアを1人抱える本当のコスト
内製が高くつきやすいのは、エンジニア1人のコストが「年収」だけでは終わらないからです。給与のほかに、採用費・社会保険・設備・教育・マネジメントといった費用が二重三重に積み上がります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 年収(中堅エンジニア) | 500万〜800万円 |
| 採用費(人材紹介) | 想定年収の30〜35%(例:約180〜210万円) |
| 社会保険の会社負担 | 給与の約15% |
| PC・ツール・ソフトのライセンス | 年30万〜60万円 |
| 教育・採用・マネジメントの手間 | 既存社員の工数(月数十時間) |
| 実質の年間コスト | 約800万〜1,000万円超(初年度) |
たとえば年収600万円のエンジニアを1人採る場合、給与600万円に社会保険の会社負担が約90万円、初年度は採用費が約180〜210万円、PC・ツールで約40万円が乗ります。ここに、指示・レビュー・面談に取られる既存社員の時間(これも人件費です)を足すと、「見かけの年収」の1.5〜1.7倍が実際の年間コストになるのが普通です。
さらに見落としてはいけないのが、1人だけだと退職・病気・産休で開発が完全に止まるという点です。属人化した状態で担当が抜ければ、引き継ぎもできず一からやり直しになりかねません。だから実務では2人以上の体制が推奨され、そうなると**内製は「毎年1,500万〜2,000万円級の固定費」**を背負う選択になります。
一方、外注は必要なときに必要な分だけの費用です。100万円のシステムを外注しても、内製エンジニア1人分の年間コストにすら届きません。仕事が途切れれば費用も止まる——この「固定費にならない」点が、外注の最大の強みです。
「内製は人件費だけ見ればいい」と思われがちですが、実際には採用・教育・設備・マネジメント・離職リスクという見えにくい費用が層になって乗ってきます。この記事では、その全体像を具体的な数字とともに一つずつ分解していきます。
内製と外注の違い(現実的な比較)
| 内製(社内で作る) | 外注(開発会社に頼む) | |
|---|---|---|
| 実質コスト | 毎年1,000万円級の固定費 | 案件ごと(100万〜) |
| 立ち上げ | 採用に3〜6ヶ月+育成 | すぐ着手できる |
| 撤退のしやすさ | 難しい(雇用責任) | 案件単位で止められる |
| ノウハウ | 社内に蓄積する | 溜まりにくい |
| 品質の担保 | 採用した人の力量次第 | 会社の体制・実績に依存 |
| スピード | 採用が終われば速い | 依頼から着手まで数週間のことも |
| 向くケース | 常時・大量の開発がある | スポット〜中規模の開発 |
もう少し具体的に、それぞれの良し悪しを整理します。
内製のメリット
- 事業に深く踏み込んだ知識が社内に溜まる
- 思い立ったらすぐ手を入れられる(依頼・見積りの往復が不要)
- 仕様変更や小さな改善を高速で回せる
- 開発ノウハウが競争力として蓄積する
内製のデメリット
- 毎年1,000万円級の固定費が発生し、仕事が薄い月も給与は出ていく
- 採用に3〜6ヶ月、育成にさらに時間がかかる
- 退職・休職で開発が止まる(属人化リスク)
- 1人では技術の幅が足りず、結局外注も併用しがち
外注のメリット
- 必要なときだけの変動費で、固定費を持たなくて済む
- すぐに着手でき、複数の技術・実績をまとめて使える
- 案件単位で止める・切り替えるができる
- 採用や労務のリスクを負わない
外注のデメリット
- 要件を伝え、確認するコミュニケーションの手間がかかる
- 会社選びを誤ると品質・費用でつまずく(→失敗しない会社選び)
- 依存しすぎると乗り換えにくくなる
- 社内にノウハウが溜まりにくい
損益分岐の目安:何人月/年で外注と逆転するか
判断のものさしはシンプルです。「年間を通して、エンジニア1人分(約12人月)以上の開発・改修が継続的に発生するか」。人月とは「エンジニア1人が1ヶ月働く作業量」の単位で、詳しくは人月とは何かの解説も参考にしてください。
数字で試算してみます。内製エンジニア1人の実質年間コストを約900万円とすると、1人月あたりのコストは約75万円(900万円 ÷ 12ヶ月)です。一方、外注の相場は内容によりますが、たとえば1人月あたり80万〜120万円が一つの目安です。ここから逆転ラインが見えてきます。
| 年間の開発ボリューム | 内製の負担 | どちらが得か |
|---|---|---|
| 年2〜3人月(小さな改修中心) | 900万円の固定費がほぼ遊ぶ | 外注が圧倒的に割安 |
| 年6人月(半年分くらい) | 半分は仕事がない | 外注が有利 |
| 年12人月(ほぼ常時稼働) | ほぼ埋まる | ほぼ互角(内製の検討ライン) |
| 年18人月以上(1人では足りない) | 2人目が必要に | 内製が有利になり得る |
ポイントは、**内製は「使わない月も費用が出ていく」**こと。年に数本+スポットの改修程度なら、エンジニアの手が空く月が必ず出ます。その空き時間ぶんも給与は発生するため、実際の「作った量あたりの単価」は跳ね上がります。
多くの中小企業は最初の2行に当てはまります。「年に1〜2本のシステムを作り、あとは時々の改修」なら、900万円超の固定費を抱えるより、その都度外注する方が安く・柔軟です。逆に、常に開発案件が積み上がって外注費が年1,500万円を超えるようになってきたら、そこが内製化を真剣に考えるタイミングです。
もう一つ注意したいのは、内製の1人は「万能」ではないという点です。フロント(画面)、サーバー、インフラ、スマホアプリと、必要な技術領域は幅広く、1人でカバーできる範囲は限られます。「サーバーは書けるがスマホアプリは専門外」というのはよくある話で、結局その領域だけ外注する——つまり内製と外注を両方抱える形になりがちです。損益分岐を考えるときは、**「本当に1人で全部まかなえるのか」**まで見ておく必要があります。
見落としがちな「隠れコスト」
数字に出にくいコストこそ、判断を誤らせます。
内製の隠れコスト
- 採用までの3〜6ヶ月の空白(その間、開発は進まない)
- 採用に失敗して早期離職された場合の、採用費の丸損とやり直し
- 育成・マネジメントに割かれる既存社員の時間
- 退職による開発ストップと引き継ぎ(属人化)
- 特定の技術しかできず、別領域は結局外注が必要になる
- 仕事が途切れても給与は発生し続ける
外注の隠れコスト
- 要件を伝え、確認するコミュニケーションの手間
- 会社選びを誤ったときのリスク(→失敗事例に学ぶ)
- 追加費用が後から積み上がる見積り方式だと総額が読めない
- 依存しすぎると乗り換えにくくなる(→ベンダーロックインの回避)
とくに内製の「採用失敗リスク」は数字に出にくい割に痛手です。採用費180万〜210万円をかけて採った人が半年で辞めれば、その費用は戻らず、開発も振り出しに戻ります。中小企業にとってこの一撃は決して小さくありません。
一方、外注側のリスクは事前に対処できます。目的を明確に伝え、要所で確認し、着手前に総額が確定する会社を選び、ソースコードを受け取れる契約にしておけば、追加費用やロックインの不安はほぼ消せます(→契約で気をつけること)。
内製すべきか判断する5つの質問
次の5つに「はい」がいくつ付くかで、傾向が見えます。それぞれ「なぜ効くのか」を添えます。
- これから継続的に、新機能や改修を出し続ける予定か?
- 継続量が損益分岐(年12人月)を超えないと固定費が回収できません。
- その開発は、事業の競争力そのものか(他社との差別化の核か)?
- 差別化の核なら、ノウハウを外に出さず社内に溜める価値があります。逆に「あって当たり前の業務システム」なら外注で十分です。
- エンジニアを採用し、給与を払い続け、育成・マネジメントできる体力があるか?
- 採用も維持もできないと、抱えた人が遊ぶか、逆に辞めて開発が止まります。
- 今すぐではなく、時間をかけて社内に力を蓄えたいか?
- 内製は立ち上げに半年以上かかります。「今すぐ形にしたい」なら外注一択です。
- 社内に、IT の判断ができる人材がすでにいるか?
- 採用したエンジニアを評価・指示できる人がいないと、良し悪しすら判断できません。
- 「はい」が多い(4〜5個) → 内製、または内製化を見据えたハイブリッド
- 「はい」が3個前後 → まず外注で始め、量が増えたら内製化を検討(ハイブリッド)
- 「はい」が少ない(0〜2個) → 外注が現実的
ケース別・現実的な答え
- 従業員20人の運送会社が受発注を効率化したい → 開発は競争力の核ではなく頻度も低い。5つの質問はほぼ「いいえ」。外注が明確に正解。1,000万円の固定費を抱える理由がありません。
- 自社サービス(SaaS)で毎週機能を追加していく → 開発が事業そのもので、量も頻度も多い。5つの質問はほぼ「はい」。**内製(または内製中心+一部外注)**が合理的。
- 店舗チェーンが予約・在庫を仕組み化したい → 最初に作る量は多いが、その後は運用と小改修が中心。まず外注で作り、日々の運用・小改修だけ社内で。ハイブリッドが最適。
- 製造業が生産管理を刷新したい(数年に一度) → 大きな開発は数年に一度で、常時は発生しない。外注で作り、権利を受け取って社内で運用するのが現実的。
一般化ミニ事例:作った回数で答えが分かれた2社
例:年に1本ペースのA社(卸売業・従業員30名)。 受発注システムを外注で作り、以降は年に数回の改修だけ。試しに社内エンジニアを1人採用したものの、改修が終わると手が空き、給与だけが出ていく状態に。1年で「これは外注に戻すべきだった」と判断。作る量が損益分岐に届かない典型でした。
例:毎月機能を足すB社(予約サービス運営・従業員15名)。 当初は外注で作っていたが、ユーザーの声を受けて毎月のように機能追加が発生。外注費が年1,500万円を超えたあたりで、エンジニアを採用して内製に切り替え。開発量が損益分岐を超え、内製の固定費が回収できるようになった典型です。
2社の違いは規模ではなく「作り続ける量と頻度」でした。ここが内製・外注を分ける本質です。従業員数や売上ではなく、「これから毎月どれだけ手を入れるか」で判断するのが正解です。
実は最強:ハイブリッドという第3の選択
「内製か外注か」は0か100かではありません。中小企業で最も失敗しにくいのは、外注で作り、日常の運用・小さな改修だけを社内で担う進め方です。
- まず外注で、必要なシステムを総額の見えた形で作る
- 納品時にソースコードとドキュメントを受け取る(乗り換え可能にしておく)
- 日常の軽微な運用は社内で、大きな改修は再び外注に
- 開発量が増え、常時12人月級になってきたらそのタイミングで内製化を検討
このやり方が優れているのは、判断を先送りできる点です。「内製すべきか」は、実際に運用してみないと分からない部分が大きい。ハイブリッドなら、まず外注で低リスクに立ち上げ、運用しながら「どれくらい手を入れ続けるか」を見極め、量が確実に増えてから内製へ——と、事実にもとづいて段階的に判断できます。
逆に、いきなり内製から始めると、まだ量も分からないうちに1,000万円級の固定費を確定させることになります。**「小さく外注で始めて、伸びたら内製」**の順序なら、初期の固定費とリスクを抑えつつ、将来の内製化の道も残せます。乗り換え可能にしておくには、契約時にソースコードの権利が自社に渡ることを必ず確認してください。
「一律料金の外注」で内製のコスト・リスクを避ける
外注で最大の不安は「結局いくらになるか」です。追加費用が後から積み上がる方式だと、内製と外注のコスト比較そのものが成り立ちません。D-oneAppは料金が一律100万円(大規模なプロプランは一律200万円)で、着手前に総額が確定します。だから内製の固定費と正確に天秤にかけられます。
内製と比べたときの利点は3つです。
- 固定費にならない:エンジニア1人の年間コスト(約900万円)の一部で必要なシステムが手に入り、仕事が途切れても費用は発生しません。
- すぐ着手できる:採用の3〜6ヶ月を待たずに開発を始められます。
- 移行しやすい:成果物(ソースコード)の権利をお渡しするので、将来ハイブリッドや内製へ移行しやすく、乗り換えの自由も残ります。
会社選びはシステム開発会社の選び方、費用は費用相場と一律料金の記事、100万円で何ができるかは100万円でできることもどうぞ。
まとめ
内製と外注は「作る量」で決まります。要点を振り返ります。
- エンジニア1人の実質コストは年800万〜1,000万円級の固定費。年収だけでは終わらない。
- 損益分岐の目安は年12人月。ここを超えて継続的に開発があるなら内製の検討ライン。
- 年に数本+改修程度なら外注が圧倒的に割安。使わない月も給与が出る内製は割高になる。
- 判断は「①作り続ける量 ②競争力の核か ③人材を維持できるか ④スピード ⑤IT を分かる人がいるか」の5つで見る。
- 迷ったら**「小さく外注で始めて、伸びたら内製」のハイブリッド**が最も失敗しにくい。
継続的に大量の開発があり、それが事業の核で、人材を維持できる体力があるときだけ内製が視野に入ります。多くの中小企業は「外注で作り、運用は社内」のハイブリッドが最適解です。まずは低リスクに、総額の見えた外注で一歩を踏み出すのが堅実です。自社はどのケースか迷ったら、無料相談で一緒に整理しましょう。
よくある質問
Qシステム開発は内製と外注どちらが安いですか?
「作る量」で決まります。エンジニアを1人抱える実質コストは、年収に採用費・社会保険・設備・マネジメント工数を含めると年800万〜1,000万円超が目安です。年間を通してエンジニア1人分(約12人月)以上の開発・改修が継続的に発生するなら内製が割安になり得ますが、それ未満のほとんどの中小企業では外注の方が安く済みます。
Qエンジニアを1人採用するといくらかかりますか?
年収500万〜800万円に加え、人材紹介を使えば採用費が想定年収の30〜35%(例:年収600万なら約180〜210万円)、さらに社会保険の会社負担が給与の約15%、PCやツール代がかかります。初年度は実質1,000万円前後を見込む必要があります。しかも1人退職すると開発が止まるため、実際は2人以上必要なことも多いです。
Q内製と外注、どちらを選ぶか決める基準はありますか?
「①継続的に手を入れ続けるか ②開発が事業の競争力の源泉か ③エンジニアを採用・維持できる体力があるか ④今すぐ形にしたいか ⑤社内にIT が分かる人がいるか」の5つで判断します。YESが多ければ内製寄り、少なければ外注寄りです。
Q中小企業に一番現実的な進め方は何ですか?
「外注で作り、日常の運用・小さな改修だけ社内で担う」ハイブリッドが現実的です。人材を抱えずに必要なものを手に入れ、事業が伸びて開発量が増えてから内製化を検討すれば、初期のリスクとコストを最小化できます。